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○0698『化物語(上・下)』

『化物語(上・下)』
著者名:西尾維新 出版社:講談社 文責 国語 坂本幸博

 近年、書店の売り上げランキングにおいて上位を占めているのが「ライトノベル」と呼ばれる作品群である。いわゆる「少年・少女向け」であり、内容も高校生の学園生活を題材にしたものや、架空の世界で繰り広げられる冒険活劇といったものであることが多い。ゲームやアニメーション、漫画の世界を小説化したようなイメージで捉えるとわかりやすいと思われる。挿絵もふんだんに使用されており、若者には絶大な評価を受けている。しかし、「大人」の立場から「子ども」に読書を勧める際には、「ライトノベル以外にしなさい」という条件をつける「大人」もいるのではないかと想像される。
 私自身、「ライトノベル」が悪いものであるとは思わない。しかし、それは飽くまで、文章・活字に慣れるための最初の「ステップ」であると考えているからである。文章・活字に慣れた後には、いわゆる「文学作品」にも触れてほしいと考えている。
 そのような漠然とした考えしか持っていなかった私が、本格的に読んでみようと思った「ライトノベル」が、この『化物語』である。まず、繙いてみて驚いたのが、挿絵がほとんど使用されていないということである。これは「ライトノベル」では非常に珍しいことではないだろうか。また、作者のセンスなのであろうが、いわゆる「言葉遊び」がふんだんに使用されている。それを読み解くためには、他のさまざまな知識が要求されるので、なかなかに読み応えがある。
 上巻のエピソードから「ひたぎクラブ」を紹介してみたい。主人公の少年は、ある時、階段から落下した少女を受け止める。その瞬間、彼はその少女に体重がほとんどないことを知るのである。その少年は少女のために行動を起こそうとするが、少女からは「無関心でいろ」と逆に脅迫されるのである。「誰にも解決はできないのだから」と。
 ところが、その少年は数ヶ月前に一度「吸血鬼」になってしまい、ある人物の力を借りて、人間に戻っているのである(ただ、100%という訳にはいかず、現在は半吸血鬼状態である)。だから、協力できるのだと少女に告げ、少女をその人物に引き合わせる。すると、その人物は少女の体重を奪ったのは「おもいかに」という「蟹の怪異」であることを告げる。少女はあるつらい思いを「おもいかに」に預ける際に、体重も一緒に持って行かれたのである。
 九州・四国の島々には、「蟹が思いを運ぶ」という言い伝えがあるそうである。石牟礼道子の小説『言葉の秘境から』にも、そのことが紹介されている。思いが鳥になって届くというのは我々にもイメージしやすいが、蟹が運ぶというのはなんとなくしっくりこないように感じる。ただ、平家の恨みをその身に背負った「平家ガニ」はその伝承と関わっているのではと考えるとなかなかに興味深い。
 当該図書の著者がその伝承を知っていたがどうかははっきりしないが、著者が教養のある人物であることは、その文体や表現から容易に想像することができる。タイトルからして「化け物」と「物語」の複線構造(掛詞ではない)になっているのである。
 他のエピソードも秀逸の出来であった。読了感もさわやかであり、シリーズの作品をすべて読んでみたいという気持ちにさせられた。三十代の人間にも比較的無理なく読むことのできる「ライトノベル」というのは、とても貴重な存在なのか、はたまたそういった作品は、私が知らないだけで他にもあるのか、何とも興味深いところである。「ライトノベル」というだけで「食わず嫌い」をしていれば、この作品と出会うことはなかったのだと考えると、心を広く持とうという気分にさせられる。

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