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○0740『恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八編』

『恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八編』
著者名:菊池寛 出版社:岩波文庫 文責 国語 坂本幸博

 当該図書は文豪菊池寛の短編作品をまとめたものである。
 表題にある「恩讐の彼方に」は九州耶馬渓、青の洞門の伝説を、「忠直卿行状記」は、越前の松平忠直が大阪の陣での論功行賞を境に暴君と化してゆく、君主の人間的悲哀を巧みに描いた作品である。
 当該図書に収められている作品の中から、今回は「形」について書いていきたい。時は戦国乱世である。その名を聞いただけで敵が震え上がり、刃を交えることなく逃げ出してしまうほどの名の通った槍の名手が、主君の若君にそのトレードマークである緋縅の鎧を貸してほしいと請われる話である。その名手は、若君が自身にあやかりたいと考えていることを誇らしく思い、ますます自信を募らせ、快く鎧を貸すのである。
 合戦が始まり、若君は初陣であるにもかかわらず、めざましい働きをする。若君の緋縅の鎧を鎧を見た敵は、蜘蛛の子を散らすように逃げまどうのである。若君は手にした槍で、その敵を苦もなく討ち取り続けていく。
 槍の名手はその様子を満足げに眺めていた。若君の勇姿に満足していたことも、もちろんではあるが、それ以上に自身の通り名もなっている緋縅の鎧が、すさまじい力を発揮していることに大変満足していたのである。敵は崩れ、流れは自軍に傾いている。そのように判断した槍の名手は、駄目を押すために馬にまたがり、愛用の槍を手にし、颯爽と戦場に駆け込むのである。ただ、着ている鎧だけが、いつもの緋縅の鎧ではなかったのである。
 いつもの要領で、敵中に躍り込んだ槍の名手は、敵に対してある違和感を感じる。いつもと比較して、自身に突き出される槍が力強く感じられるのである。そればかりか、いつもは自身の姿を見ただけで逃げ出す敵が、今日は自身に向かってくるのである。それこそ、緋縅の鎧武者に対する恨みを、この黒い鎧の武者にぶつけようとしているかのようである。槍で突いても突いても群がる敵に焦りを感じた槍の名手は、若君に緋縅の鎧を貸したことを後悔し始める。そしてその瞬間、敵の槍が自身の脇腹を貫いたのである。
 この話は我々に多くのことを示唆してくれる。初読では、緋縅の鎧が「形」として力を持っていることが強く印象づけられる。しかし、繰り返し読んでいくと、この槍の名手の「驕り」や「慢心」が一番の問題ではないかと思えてくるのである。槍の名手は自身の名声におぼれ、努力することを怠ってはいなかったのか。謙虚さに欠けていたのではないかと思えてならない。
 謙虚さのない人間は、非常に哀れである。自身をすばらしいと思っているのは自身だけであり、その価値観を周囲に押しつけようとする余り、考えられない行動をとることがある。私自身もそのようにならないよう気をつけなくてはならない。
 「ゆめゆめ油断めされるな」である。

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