『野口英世』
著者名:中山茂 出版社:岩波書店 文責 美術 木村顕彦
現在の小学生は、野口英世の伝記を読むのだろうか。
今から20年ほど前、子ども向けの伝記によって私は野口英世を知った。それと同時期に、野口の人生を描いた『遠き落日』という映画(原作は渡辺淳一)が公開され、それも観た。
さらに高校生の頃、少年マガジン誌上において、『Dr.NOGUCHI』(作画・むつ利之)という野口の伝記マンガが連載されており、完結後に通読した。
このように思い返してみると、野口英世という偉大な人物を、私は気にし続けてきた。野口に影響されて医者を目指す、ということも特になく。
そこで、本書だ。『東北知の鉱脈』(赤坂憲雄・著)のよると、本書が一般(成人)向けの野口英世評伝の代表的なものだということを知り、手に取る。
身体的ハンディキャップによる、幼少期の差別体験。そして海外に渡ってからの研究所での待遇。実は野心的だったとか、酒飲みだったとか、借金の名手だったとか、ただの偉人の伝記とは違った意味での感動が本書にはある。
また、野口英世の人生、といえば必ず語られるのが母・シカの偉大さだ。よく考えてみると、野口英世が世に出なければ、シカの人生が語られることもなかった。だが、明治時代にシカ同様に働きづめだった無名の人々は多かったはずだ。そのことも踏まえて本書を読むのも、面白いかもしれない。
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