『深読み!日本写真の超名作100』
著者名:飯沢耕太郎 出版社:パイ インターナショナル 文責 美術 木村顕彦
日本を代表する写真評論家・飯沢耕太郎が日本写真の名作100枚・100写真家を選んだ。時代ごとの区分と、その時代に属する写真家が紹介されている。「1930-1989」は、木村伊兵衛、土門拳はじめ、聞き慣れた写真家の名前が並ぶ。だがそれ以前の「1850-1929」で私が知っていたのは上野彦馬・横山松三郎のみ。詩人・萩原朔太郎と画家・竹久夢二による写真も含まれていて意外に思う。その二名が撮った写真が「超名作100」に選ばれているところに選者である飯沢のセンスが光る。まだ写真とはいかなるものかもわからない時代、それが職業になるかどうかもわからない写真草創期に撮られた写真は不思議な魅力がある。
1873年に『開拓使札幌本庁上棟式』という写真を撮った武林盛一なる写真家の名前も、本書を通して初めて知り、興味を覚えた。なぜなら、解説文によると武林は「陸奥国弘前の出身」とあったからだ。私は現在青森県弘前市に住んでいるが、これまで武林盛一という写真家がいたことは聞いたことがなかった。身近なことでも、まだまだ知らないことだらけだと痛感する。
ちなみに、青森県というくくりで本書を眺めると、小島一郎(青森県出身)撮影の「津軽」、内藤正敏撮影の「婆」(現・つがる市に住む老婆を撮影)、土田ヒロミ撮影の「俗神」(弘前公園の花見の季節、茶店の女性にもたれかかる中年男を撮影)の3作品が目につく。
また、「1990-2011」の章では、現在進行形の、今後が楽しみな写真家の名前が並ぶ。本書をきっかけに、掲載作品以外にも見てみたいと感じた写真家も多い。日本写真の入門編をして最適の1冊だ。
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