『サーカスが来る日』
著者名:本橋成一 出版社:リブロポート 文責 美術 木村顕彦
本書は、本橋成一が韓国のサーカス団を撮影した写真集(1989年刊)である。
以前この書評の場で、本橋による『サーカスの時間』という写真集を紹介したが、それは日本のサーカス団を撮影したものだ。韓国と日本の違いはあれども、本書は『サーカスの時間』の続編と言える。巻頭に、本書の撮影と刊行の経緯が綴られているので引用する。
「ぼくは四年間通い『サーカスの時間』という一冊の写真集にまとめることができた。(改行)あれから10年、六ツあったサーカス団は現在四ツになっている。“無駄”をそぎ落とせなかったサーカス団はつぶれてしまった。(改行)韓国で初めてサーカスをみたのは1984年の暮だった。(略)(改行)ぼくはそこでまたあの“サーカスの時間”に出会えた。1000ウォン(約200円)で一日中サーカスがみれる、みせられる時間と場所のある贅沢さ-、韓国にはまだサーカスが来る日があった。」
1984年に撮影を開始し、1988年にはソウルオリンピックが開催される。そして1989年に本書が刊行。
その後の韓国の急成長は、我々日本人も無意識に知るところである。1984年に、200円で一日中みることができたサーカスが、今どんな状態かは、私は知らない。日本のサーカスを撮影した『サーカスの時間』のみならず、本書収録の韓国のサーカスも、いまはむかしの話であろう。
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