『カトウくんのおまけ 玩具デザイナー加藤裕三の世界』
著者名:吉田光夫 出版社:ダンク出版 文責 美術 木村顕彦
加藤裕三(1950-2001)。50歳で亡くなった玩具デザイナーだ。
彼の名前を知らずとも、多くの人たちにはこう言うと伝わるはずだ。-「グリコのおまけのデザイナー」。
本書は、そのデザイナー・加藤裕三がいかなる人物だったかを伝える一冊だ。
ちなみに、グリコのおまけとは、製菓会社グリコのキャラメルについたプラスチック製のおもちゃのこと。
「グリコのおまけ」は彼が木製の原寸原型を製作し、それをプラスチック製にして量産される。その木製原型は、本書巻頭のカラーページで見ることができる。
本書では西田明夫(カラクリ木工おもちゃ作家)、小黒三郎(糸のこ木工作家)との出会いや「11人が語る加藤裕三」という章もあり、彼がいかに多くの人に愛されていたかがよくわかる。
また、加藤を語る上で欠かせない出来事がある。阪神大震災(1995年)だ。
加藤は大震災で被災し、その時の苦悩が本書で綴られている。
「あの震災で仕事場が全壊した。私は何も作れなかった。(略)地震で壊れたのは、場所や道具や日常の時間の流れ方だけではない。仕事として作品を作る義務、理由、目的、それから自分の内のおもちゃづくりの経験やこころざしやいろいろな思いが、消えていた。」
しかしながら、震災の体験は、ものづくりにおける「素朴さ」を再び考えさせる契機となった、ともある。・・・加藤は、震災後わずか6年しか生きることができなかったが、彼の仕事は多くの人の記憶に残っていくだろう。