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東奥義塾高等学校 公式ブログ

○1610『夏の庭』○

 『夏の庭』
著者名:湯本香樹実 出版社:新潮社 文責 地歴公民 加藤真之

 私が担当する部活動では、今年も夏合宿を行いました。8月の後半は全国的に悪天候が続き、夏らしさを感じられる日が少なかったように思います。秋を感じさせるような虫の声に、もう忘れてしまいそうですが、7月の終わりから8月の初旬には暑い日が続きました。私が担当する部活動は屋内競技であるため、基本的には天候に左右されずに活動することができます。しかし、外の気温が上がると体育館は35度を超えることもあり、外で活動する競技と同じかそれ以上に生徒の体調管理には注意を要します。通常より多く、長めの休養と給水を交えながら練習に取り組ませなければなりません。体調の異変に気がついたら一旦練習を休ませるなど、生徒の様子を注意深く観察することも大切な仕事のひとつになります。湿度が高いと、練習環境はさらに厳しいものになります。風が凪いでいる日は窓を開けても空気がうまく循環しないこともあり、湿った空気が思うように出ていってくれません。今日は蒸し暑く汗がひかないなと思って体育館の湿度計を見ると、嘘か本当か100%を超えていることもあります。そんな中で体育館を走り続けさせるわけですが、生徒は本当に大変な思いをしていたはずです。それでも指示通りに動こうとしている姿を見せてくれました。練習メニューを指示している私自身が、よく頑張るなあと思いながら生徒の様子を見ていたくらいです。
 午前練習・午後練習・夜練習とこなしているわけですから、体はもうへとへとに疲れているはずです。それでも夜になると「夏の魔法」がかかるのか、生徒たちは合宿所で楽しそうにはしゃいでいました。この「夏の魔法」には、私にも心当たりがあります。私にも高校生の頃、夏の合宿を行った経験があります。夜になると疲れた体に何か新しい力が湧き出すような「夏の魔法」に、かつて高校生だった私もかかりました。そして就寝時間の後に、こっそり合宿所を抜け出すのです。全裸でプールに入るのは定番ですね。街灯の明かりを夜霧がぼんやりと浮かび上がらせています。その淡い光が水面に反射して、光の帯が暗い水の中をひらひらと舞うように見えます。その光の帯を切りながら、水の中を泳ぐのです。その気持ちいいことといったらありません。これこそ夏の醍醐味とばかりに、私たちは夜のプールを満喫します。夏の夜の公園も、私たちの王国です。自動販売機で缶コーヒーを買って公園に入ります。やりたいことは山ほどもありますが、私が好きだったのは滑り台の上の鉄板に寝そべることです。そこは冷たくて気持ちがいいのです。仰向けに寝そべれば、目の前には星空が広がっています。当時も今も、夜空を見上げて星の名前や星座を言い当てることなどできはしませんが、夏の夜空を見上げている時間こそが特別なのです。あまりにも幸せすぎてついうとうとしてしまい、目が覚めたときには夜が白々と明け始めていたということもありました。朝の光に追い立てられるように急いで合宿所に帰ったことを、今でも鮮明に覚えています。
 『夏の庭』は、少年たちのひと夏の冒険物語です。「死」について興味を抱いた少年たちは、「死」に近いと思われる老人に対する「観察」を思いつきます。まずはこの発想に驚かされます。見知らぬ老人が死に至るまでの様子を「観察」しようなどと、何と恐ろしいことを思いつくのでしょうか。しかしよく考えてみると、このことは子どもながらの残酷さをよく表現しているように思えます。子どもの行動には、相手が傷つくことを予測することなく、思ったことをそのまま口にしてしまうようなことが往々にして起きます。それは子どもが十分な社会性を身につけていない分、他者に対する思いやりを欠くことがあるために生じるのです。「死」の恐ろしさや虚しさを知らないからこそ、客観的に「死」を「観察」しようとする意志が生まれるのです。「観察」はやがて老人の気付くところとなりますが、少年たちと老人との交流が進むにつれ、いつの間にか互いの存在に深い意味を見出すようになります。この変化がとても面白く描かれ、まるで作者が「夏の魔法」をかけたように、読者はぐいぐいと物語世界に引き込まれていくのです。
 『夏の庭』の少年たちについて感心させられるのは、自らの手で冒険を手に入れようとしている点です。私たちは日常生活を送るなかで、冒険しようかどうか迷うことがあります。冒険にはそれなりのリスクがともなうからこそ迷いが生じるのです。大人になるにつれて社会的な責任が増すため、冒険に対するリスクが増大する事実には、多くの方々に賛同していただけるところだと思います。例えば全裸で泳いでいる姿を目撃されても、高校生ならば笑ってすまされるでしょう。しかし、大人になればそうはいきません。例えが適切かどうかは別にして、大人の行動は子どもの行動よりも多くの制約を受けているのです。しかしそれでもなお、冒険したいと思う心に嘘をつけないことはあるでしょう。『夏の庭』の少年たちが「死」を知るための冒険を始めたように。ときには自分の感情に正直に向き合い、心が冒険したいと言っている声が聞こえたような気がしたら、思い切って行動を起こしてみるのもいいじゃないですか。まだもう少し、夏は残っています。「夏の魔法」を言い訳にして、ちょっとだけ悪い大人になってみることをお勧めいたします。あっ、そうそう、今回の文章はあくまでも大人の方々に対するメッセージです。そうか、「夏の魔法」を言い訳にすれば少々悪いことをしてもいいんだな、などと考えている20歳未満がいたとしたら、それは大間違いです。特に我が部活動の生徒達よ。合宿中に合宿所を抜け出すようなことがあれば容赦なしでしごきます。
学校所在地
036-8124               青森県弘前市石川長者森61-1  東奥義塾高等学校 TEL:0172-92-4111 FAX:0172-92-4116

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