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○1716『おおきな木』○

『おおきな木』
著者名:シェル=シルヴァスタイン 翻訳者:村上春樹
出版社:あすなろ書房 文責 地歴公民 加藤真之

 奥付には「Copyright 1964」とあり、この年に出版された本であることが分かります。村上春樹の訳によりあすなろ書房から本書が出版されたのが2010年なので、40年以上の長きにわたって世界中の人々に読み継がれてきた作品であることがうかがい知れます。なぜこれほどまでに時間と空間を超えて『おおきな木』が愛され続けてきたのか、実際に作品を読んでみるとよく分かるような気がします。それは物語に込められた価値観なり教訓が、普遍的なものだからです。
 この物語の登場人物はたったの二人です。正確に言えば、人間の少年と木ですから、一人と一本ということになるでしょう。しかし、ここでは木に人格が与えられているため、やはり二人と表現しても差し支えはないように思います。他の作品についても同じことが言えるかもしれませんが、読後感の違いは二人の登場人物のうちどちらにより一層強く感情移入したかによって異なります。少年の姿に強く感情移入した方は、人生の局面ごとに木の優しさに甘え続けた少年の身勝手さに怒りを感じることでしょう。また、年老いて木の下に戻ってきた、かつて少年だった老人が、今度こそ木に対する深い感謝の気持ちをもってくれているようにと、期待せずにはいられないはずです。そこまで描いてしまうと無粋な作品に陥ってしまうことは分かっています。しかし少なくとも私は、かつての少年が様々な経験を経て老人となる過程で、木に甘えすぎていたことに対する改心があったものと信じたいと思ってしまうのです。
 木は、少年のためならばとすべてを捧げてしまいます。あるときは葉を、りんごを、木陰を少年に提供します。さらに、家を建てたいという少年にすべての枝を差し出します。少年が、作った船でどこか遠くへ旅立ちたいと告げれば、木は惜しげもなく自分の幹を少年に与え、とうとう切り株を残すだけとなってしまいます。読者である私たちの心を揺さぶるのは、木がしだいにみすぼらしい姿に変わり果てていく様子を目の当たりにする切なさなのかもしれません。しかしそれ以上に心に響くのは、少年に何かを与えるたびに木が「しあわせでした」と感じる点です。木の望みはただひとつ、少年の幸せだけなのです。そこに見返りを求めようとする姿などは一切認められません。無償の愛があるだけです。
木には、少年を人間的に成長させるために、取るべきもっと別の方法があったのではないでしょうか。教育に携わる私の立場からすれば、少年の未来をもっと真剣に考えてみようとすればするほど、時には厳しく少年の行動を戒める必要があったのではないかと思うのです。希望を必ずしも期待通りに実現することができなくても、他の方法を考えたりその時間を耐え忍んで遣り過ごす、我慢強さをこそ育て上げる必要があったのではないでしょうか。しかしそれと同時に、木の姿から私が学びとったこともあります。それは、待つことの大切さです。木は、少年が目先の幸せを十分に試した後、やがて昔のように自分の下に戻って来ることを知っていたのではないでしょうか。そのことに気がつくためのきっかけを少年に与え続け、いつか本当に大切なものの存在を少年が知ることを信じて待ち続けていたのではないでしょうか。久しぶりに少年に会うことができると、「木はこころからしあわせでした それこそもうくちもきけないくらい」。少年に接する態度を敢えて硬化させて教え諭すよりも、木は無償の愛を少年に注ぐことを選んだのです。それもごく自然に。この無償の愛という普遍的な価値を何度も私たちに思い出させてくれる材料として読まれるからこそ、『おおきな木』は幾世代もの人々に読み継がれてきたのだと思えるのです。 
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