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○1723『ヒトに問う』○

 『ヒトに問う』
著者名:倉本聰 出版社:双葉社 文責 美術 木村顕彦

 倉本聰(1935-)。脚本家・作家。北海道の富良野を舞台としたテレビドラマ『北の国から』シリーズの脚本で知られる。
 本書は、彼が、東日本大震災後に考えたこと、思うことを綴った一冊だ。
 巻末記述によると本書は「NPO法人富良野自然塾の機関誌『季刊・カムイミンタラ』に連載中の『ヒトに問う』」を単行本化したもの、とのこと。
 さて、まずは本書の内容とは直接関係ない話から。
 倉本はよく、テレビドラマの脚本を説明するとき、「糖衣錠」という例えを用いる。糖衣錠とは、苦い薬が、砂糖でくるまれた錠剤のことだ。
 作者が、作品を通じて視聴者に、本当に伝えたいメッセージ。そんな、苦い薬(本当に伝えたいメッセージが前面に出てしまっているテレビドラマ)を直接投げかけても、視聴者はそんな苦い薬を飲んでくれない(そんなテレビドラマは観てくれない)。だから、脚本家は面白おかしいシーンを多く描き、そして本当に伝えたいメッセージは最小限に留める方法をとる。その方法が、彼の言う「糖衣錠」である。
 前置きが長くなったが、私が言いたいのは次のようなことだ。
 ・・・そんな「糖衣錠」に包まれた倉本テレビドラマに比べると、本書は、全く糖衣錠に包まれていない。
 震災後、日本人は暮らし方を改めていかなくてはならないという趣旨の主張。そして特に原子力発電に対して、はっきりと反対する意思が、本書にはみなぎっている。
 本書で綴られている内容は、正しい。考え方には私は基本的には賛同する。
 しかし。私は本書に対して若干のアレルギー反応がある。
 糖衣錠に包まれた、あの面白い倉本ドラマに比べて、本書の内容はあまりにも直接的すぎはしないか?と思ってしまうのだ。
 倉本の怒りが前面に出過ぎている。いや、怒っているのだから当然なのだが。そして、思いを綴っているのだから直接的でもいいのだが。
 まずもって気になったのは、本書の初出が、前述のように「富良野自然塾の機関誌」に連載されたものだということ。
 何をどこに連載して、どこの出版社が単行本化をしてもいい。ここで私が強調したいのは、富良野自然塾のメンバーたちが本書の読者ならば、内容を完全に全面的に賛同して、賞賛して、嬉々として読んで、全く反論をしないのでは?という私の勝手な思い(推測)についてだ。
 例えば次の記述。引用する。
 「先年北海道洞爺湖で、環境に関する先進国サミットが行なわれた時、僕(木村註・倉本のこと)は道庁の役人に、会場の窓を開け放ち、外気と飛び交う虫たちを遠慮なく受け入れながら、その中に各国首脳を迎え入れて議論が出来ないかと提案したが、一蹴された。」
 ・・・それは、一蹴されるだろう。倉本がいかに真剣にその提案をしたとしても、相手は「道庁の役人」だ。現実的とは言えない。
 次。
 「総理をはじめ政治家はまず自分の選挙区に核の処理場を誘致することを選挙の前に公約すべきである。そしたら絶対当選しないから。」
 ・・・「そしたら絶対当選しないから。」そんな事を、わざわざ「総理をはじめ政治家」が、するはずがないではないか。この記述は、単に政治の腐敗構造を明らかにしているだけではないか?
 富良野自然塾のメンバーたちならば、以上引用した内容(その他、本書には多くあるが)を読んで、「倉本先生!よく書いてくれた!スッキリした」と言うかもしれない(あくまで私の想像)。だが、それだけではもったいない。
 内容が素晴らしいだけに悔やまれる。
 その他、植物学者・宮脇昭の業績(話は飛ぶが、宮本輝の小説『三十光年の星たち』に、宮脇をモデルにした場面が登場する)や、樋口健二の写真集『原発崩壊』(この書評の場でも取り上げた)についての説明、美術展『The Art of Gaman』を観た時の感動(倉本は東京上野でこの展示を鑑賞し、テレビでも大きく取り上げられた。大戦中の日系人強制収容所で日経移民たちがつくった作品、日用品の数々を展示したもので、私は仙台巡回展で鑑賞した。その展覧会の作品をまとめた『尊厳の芸術』という書籍についても、この書評の場で紹介した)などなど、私自身の興味と重なる記述も多い。
 ここまで、長々と悪口とも受け取られるようなことも書いてきたが、とにかく、より多くの人に読んでいただきたい一冊。
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036-8124               青森県弘前市石川長者森61-1  東奥義塾高等学校 TEL:0172-92-4111 FAX:0172-92-4116

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