『黒澤明【田村彰英写真集】』
著者名:田村彰英 出版社:NTT出版 文責 美術 木村顕彦
ほとんどはモノクロ写真。後半に、カラー写真。
被写体は、タイトルからもわかるとおり、映画監督・黒澤明(1919-1998)。
本書は、写真家・田村彰英が撮影した、黒澤明写真集である。
1975年から1991年に至る、黒澤明の姿。サングラスによって隠された表情からは、年月による加齢は感じられない。映画に対する情熱からか。
本書に収録されている写真は、撮影現場での黒澤を写したものがほどんどだ。
写真には、撮影年と場所、そしてその時撮影されていた黒澤映画のタイトルが。
『影武者』『乱』『夢』そして『八月の狂詩曲』。日本映画を彩る名作群だ。
・・・私は、どれもまともに観てはいないけれど(失礼なハナシ)。
さて、本書収録写真は、スタッフと交流する黒澤の姿を写した写真群と、黒澤ひとりを撮ったものの二種類に分けることができるだろう。
前者の魅力もさることながら、私の胸をうつのは後者だ。
威厳を保ちながら、どこか寂しげな黒澤明の立ち姿。
創作に対するエネルギーは内包しているのだろうが、頂点を極めた者の孤独をたたえているように見える。
また、本書巻頭には、映画評論家・淀川長治の寄稿、巻末には漫画家・藤子不二雄Aと美術家・横尾忠則による寄稿文が掲載。お三方とも、熱い熱い黒澤ファンであることが、その文章から伺い知ることができる。
撮る者を撮った写真集である。