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○1846『もっとも危険な長い夜』○

 『もっとも危険な長い夜』
著者名:小手鞠るい 出版社:PHP研究所
文責 地歴公民 加藤真之

 兄弟姉妹との関係が、意外と難しいものだと感じたことはないでしょうか。結婚することで生じる新しい兄弟、すなわち義理の兄弟はさておき、ここでは両親を同じくする場合を前提として話を進めていきます。兄弟姉妹どうし血が繋がっているわけですから、肉親と呼ぶにふさわしい関係だと言うことが出来ます。それと同時に血がつながっているからこそ、生まれた瞬間から上下関係がはっきりと区別される関係であると言うこともできます。年齢の差による上下関係のとらえ方には個人差があるでしょうし、兄弟姉妹間の関係性の差も大きく関わってきます。家庭によってはこの差を出来る限り埋めるためか、幼いころから年齢の上下に関わりなく兄弟姉妹を互いに名前で呼ばせている場合もあります。それでも、この年齢の差を、なかなか超えることが出来ない壁としてとらえている人は少なくないはずです。長男だから家を継がなければならないのだという場合や、あるいはその反対に、家を継ぎたいけれど兄(姉)が継ぐことが決まっているので独立して家を出なければならないなど、兄弟姉妹のどこに位置しているかによって、その後の生活のあり方が大きく左右される場合は少なくありません。
 今回取り上げる『もっとも危険な長い夜』は、三人姉妹の物語です。周囲に良い結婚をしたと評される、長女の瞳。塾の講師をしながら作家になることを志望する、次女の双葉。天真爛漫を絵にかいたようなイラストレーター、三女の美子(みこ)。このうち三女の美子だけが、長女と次女にとっての新しい母親の連れ子です。美子だけが血が繋がらない姉妹ですが、子犬のように甘える彼女は家族の誰からも愛され、三人はどこからどう見ても「本当の姉妹」でした。物語のなかで、長女の瞳はいかにも長女らしい振る舞いを見せます。安定した家庭を築き、時には腕によりをかけた料理をこしらえて姉妹を自宅に招き、もてなします。ある意味において姉としての理想の姿を見せることに縛りつけられていると言ってもいいでしょう。次女の双葉はとても堅実なものの考え方が出来る反面、物事に慎重すぎて大切な一歩を踏み出しかねています。瞳との間に確執を持っているという事実が、双葉の行動を一層慎重にさせています。三女の美子は明るい性格が幸いし、大人になってからも誰からも愛される立場を保ち続けることが出来ています。物語のはじめでは、瞳と双葉の双方に気楽に行き来する役割を果たしています。末っ子として可愛がられてきたことが、美子の人間性に好ましい成果を与えているように思えます。年齢の差による上下の関係に縛られている、あるいは上手に利用しているそれぞれの登場人物の様子が巧みに描き分けられているように読み取ることが出来ます。
 しかし物語の展開は、そう簡単に互いが幸せになることを許してはくれません。それぞれの夫や恋人を巻き込んで、三人姉妹の心情は激しく変化し続けます。瞳と双葉が十年も前から抱えてきた確執とは、瞳の恋人に恋をした双葉が、彼を奪い取るために最終的な手段に出たことに端を発しています。この決してしてはいけないはずのことを双葉が実現してしまったことで、互いの心はひどく傷つけられました。それぞれに謝りたい、許したいという思いはあるのに、それがうまくできないがために冷たい関係が続いていました。一方、双葉の現在進行形の恋愛も、相手との関係に限界を感じ始め、決してうまくはいっていません。そんな折、三女の美子が双葉の恋人に恋心を抱いている自分に気がついてしまいます。この恋に走ってしまえば、かつて双葉が瞳にしたのと同じような仕打ちを、今度は双葉に与えることになってしまいます。過去の出来事によって心を深く傷つけた双葉に、さらに深く大きな傷を負わせてしまうことになるのです。この恋を推し進めることはできない。そう言い聞かせて、美子は自らの葛藤に答えを見出そうとします。
 ここで美子の恋人と長女の瞳とが恋におちたら、三つ巴の恋愛戦争が始まってしまうなと思いながら物語を読み進めていくと、果たしてその通りの展開になってしまうのです。正直なところ、これではあまりにも節操がないのではないのかと思いました。いくらなんでも、と。いくらなんでも、三姉妹が三人とも、かつて誰かの恋人だった男性を横恋慕し、その結果男性への想いを見事に実らせてしまうという状況は、やはり節操がないとしか言いようがないと思いました。誰かと付き合っている異性の姿を傍観するうちに、見えてきたその人間性に惚れ込んでしまうという状況が起こりうるのかもしれません。また、嫉妬や憎悪からか、特定の知人が恋人を作ることが許せず、その関係を壊したいがために知人の恋人を誘惑するという物語は、どんな時代にもどんな国にも散見されます。そうは言っても三姉妹が三人とも姉妹間で恋人をやりとりしているかのような状況は、果たして現実的な価値を持ち得るのでしょうか。私自身はちょっと首をかしげたくなってしまいました。しかし、物語そのものがハッピーエンドであることにはほっとしました。互いの恋人を奪い奪われる関係を描いたうえ、どろどろとした憎悪が渦巻くような結末を迎えたのでは、それこそありきたりで寒々しい物語になってしまいます。そうではなく、相手を尊重しながら好意的に見ていこうとする登場人物たちの態度が、清々しくも優しくもあり、とても好感がもてました。読後にそんな気持ちになれる小説が好きだという方に、お勧めしたい一冊です。それにしても、人ってこんなにも恋愛に貪欲になれるんですかね。分かんないなあ。などと言っておきながら、実は貪欲になってみたいと思っている今日この頃でした。
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