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○2009『ボランティアへのまなざし―病院ボランティア組織の展開可能性』○

 『ボランティアへのまなざし
―病院ボランティア組織の展開可能性』
著者名:竹中健 出版社:晃洋書房 文責 理科 井上嘉名芽

 ボランティアVolunteerという語は、そもそも「自発性」、「自発的であること」を意味する用語である。本来ボランティアの理念とは「自発的な行為」である。しかし、「強要された行為」や、「他者によって誘導された行為」があるとするならば、本来のボランティアの理念からはかけ離れてしまう。しかしながら、人々の「自発的な行為」の多くは、「ボランティア」という用語によっては呼ばれていない。結婚であるとか、出産、介護、進学そして職業選択のプロセスなど、個人の自発的な行為選択の結果が私的領域に留まる限り、それらの行為はボランティアと呼ばれることはない。自発的行為選択の結果が、「社会のため」、「他の人々の役に立つ」ものであり、その行為への見返りとして賃金が支払われない場合にボランティアという用語があてがわれる。さらに、そうした無償の社会への奉仕活動であっても、すでに実行されている様々な行為については、あえてボランティアという言葉で呼ばれることはない。多忙なサラリーマンの規定時間数を超えた会社での残業であるとか、町内会での活動やPTAの活動、地域社会における近隣の相互扶助行為は、自らが所属する社会集団や他者のための献身的な無償労働であっても、通常ボランティアとは表現されない。研究者が自分の所属する学会で報告したり他の人が発表するのをコメントしたりする行為は、それに賃金が支払われるわけではないが、ボランティアと呼ばれることはない。社会の差し迫った必要性があり、それが国家・行政や市場原理によっては埋めることができ得ない状況が存在しており、それを満たすために国家・行政または企業が国民に対して、そこで働くことを呼びかける時、その対象となる行為や活動を「ボランティア」というのである。つまり、「自発的な行為」の多くはボランティアと呼ばれることはない一方で、誘導または動員された行為、すなわち必ずしも自発的とはいえない行為の多くが、それが自発的であることを意味する「ボランティア」という用語で指し示されているのである。本来は社会または他者によって誘導された行為でありながら、それが行為者自身の選択に基づいた自発的な行為であることをカムフラージュする魔法の言葉ともいえる。このように、国家・行政・企業がマス・メディアを通じて働きかけがあるときにはじめて「ボランティア」と呼ばれていることが多い。
 ここでボランティア概念が内包するパラドックスについて考えてみる。必ずしも自由意志とはいえない行為選択、かつ自発的でない行為に対して、「自由意志」「自発的」という意味をあらわす「ボランティア」という用語を当てていることは、ネーミングのプロセスそれ自体に解釈を加えるべき実態・関係性があるといえる。動員されて初めて「ボランティア」という名称が国家または地方自治体によって付与される。一見対等ではない不利な契約関係ではあっても、それは不利な側の行為者自身の同意・了承を得ていることをあらわす用語がボランティアである。
 ここで注視すべきは、「ボランティア」という用語を付与する側と付与される側の関係性の問題である。個人的なグループは、当事者性の強い組織であるために、たとえそれが「自由意志」「自発的」に組織されていたとしても、「ボランティア」という名称が与えられることはない。サービスを与えようとする側と受け取る側が重なりあっているからである。
 その一方で行政が、各種サービスを与えようとするボランティア行為者の労働力をあてにして、ボランティア側とそのサービスを受け取ろうとする住民の側を、何らかの理由により戦略的・意図的に結びつけようとするとき、言いかたを換えるなら前者を後者のために社会の仕組みとして誘導しようとするとき、その行為や人材に対して、これまで「ボランティア」という名称を巧みに用いて表現してきたのである。
 そうすると「ボランティア」とよばれる行為は、既存の社会関係からどれだけ自由なのか。行為者のその行為は、「ボランティア」としての活動の場を与えている様々な社会組織からどれだけ自立的であり、独立しているか。「ボランティア」と呼ばれる活動にかかわっている行為者の「主体性」という概念も、誘導された結果獲得した「主体」である可能性を排除できず、曖昧である。
 では、ボランティア行為を、我々はどのように位置づけていくのか。ボランティア行為が様々な場所で持続するということは、それをおこなう人々のなかには何らかの内的な必然性がある。様々な中間集団において、人々がどのように「公平性」の価値を実現させていこうとしているのか、今後みきわめる必要がある。
 なお、本書では病院を事例に論じられている。結論としてはボランティア組織と病院側スタッフの相互作用のあり方が、ボランティア組織の展開と衰退に深く関わっているとある。また、ボランティア行為者間の相互作用が、所属する組織の新たな規範や活動方針を生み出していくプロセスが確かに存在している。病院組織や医療行政の枠組みからはみ出し、患者のために真に必要な活動をするためには、ボランティア組織独自の対抗規範が創出されていくというステップを必ずどこかで踏み越えていかなければならないようである。そのような状況を可能にできるような制度や関係性が求められている。
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