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○2033『生きて帰ってきた男―ある日本兵の戦争と戦後』○

 『生きて帰ってきた男―ある日本兵の戦争と戦後』
著者名:小熊英二 出版社:岩波書店 文責 美術 木村顕彦

 本書は岩波新書の一冊である。
 副題にある「ある日本兵」とは、社会学者である著者・小熊英二(1962-)の父、謙二(1925-)のことである。
 つまり本書は、社会学者である息子が、父親に取材し、彼の人生をまとめたものというわけだ。
 父・謙二は、第二次世界大戦後のシベリア抑留を経験している。
 戦争体験と、収容所での生活の描写。それは、本書における大きな柱の一つである。
 だが、個人的には、その描写以上に私が興味深く読んだのは、戦後の日本での生活を綴った箇所である。
 例えば、入営(兵隊として戦争に行くこと)まで会社に勤めていた謙二が、戦後のシベリア抑留から生還し、かつて在籍したいたその会社に復職しようとした(実際には謙二は復職はできず、自宅待機を命じられた)時のことを綴った箇所。以下引用。
 「(略)復員したら受けいれるのが制度的な義務だったから、他の戦線から先に帰ったものは受けいれていたばずだ。人生は何がどうなるかわからんものだ。これまで通り給料を送るといっても、入営前の金額まで、インフレで価値が下がっていたから、生活の足しにもならなかった」
 戦争に加え、インフレにより、人生設計が狂わされた人が多かった事を、本書は教えてくれる。
 また、謙二は1952年から56年までの間、結核療養所での生活を送っていた。それについての箇所も興味深い。以下引用。
 「シベリアもつらかったが、『帰国すれば』という希望があった。しかし療養所では、結核が治ったところで、退院してからどう暮らしたらいいかの展望もない。退所できたとしても、技能もなく体力もないので、事務員くらいしかできないと思った。」 
 その他、「恩給」については、「謙二のような敗戦近くになって召集された兵士たちは、そのほとんどが恩給欠格者だった。」という記述にも驚く。
 と、いくつか引用をしたわけだが、どれもお金や生活にまつわるものである。
 このような、ある意味で細かい事象(当時の社会システム)に関しては、なかなか知る機会がない。それが、本書では随所に見られるので、読み応えがあるのだ。
 そうやって通読してみて思うのは、一言で戦争の悲劇といったとしても、実は、本当に大変なのは戦後なのかもしれない、ということ。また、運命に翻弄されたことに対する理不尽さ、誰かに想いをぶつけてもむなしいだけのような、そんな感情を持ちながら生きている人が数多くいることを思い知らされた。
 本書は、謙二の息子が社会学者である小熊英二でなければ、決して表に出なかったであろう歴史の証言だ。
 それに加え、父親についての描写の他に、社会学者としての小熊の視点も見逃せない。
 例えば、次のような記述。
 「引退した高齢者には、自動車の運転、経理事務、法律知識など、現役時代につちかった技能を持っている人が多い、そうした資源が地域活動に活かされれば有効だということは、地域活性化にとりくむ識者がしばしば指摘することである。(改行)ただし、そうした知識を持つ中高年男性には、無用な自尊心から女性を見下す者もいる。そのことが、地域活動への参加のネックになることもよく指摘される。」
 実在の個人の人生を徹底的に描写することにより、社会をがあぶり出されていく、本書はそんな一冊だ。 
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