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○2061『アートは資本主義の行方を予言する 画商が語る戦後70年の美術潮流』○

『アートは資本主義の行方を予言する
画商が語る戦後70年の美術潮流』
著者名:山本豊津 出版社:PHP研究所
文責 美術 木村顕彦

 本書はPHP新書の一冊である。
 アートに関する書籍でありながらも、タイトルには「資本主義」の文字が目につく。
 そして、本書帯にはベストセラー『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)の著者・水野和夫(1953-)による推薦文。本書文中にも同書(『資本主義の終焉と~』)が登場したりする。
 …「成長力のある周縁に資本が移動することで利益を創出する。これが資本の論理なのです。その意味で問題なのが、『中国の次がない』ということです。」
 あたかも、『資本主義の終焉と歴史の危機』からの引用文のようだが、実は、いま「」で述べたのは、本書からの引用だ。アートは閉じた世界と思われがちだが、決してそんなことはないことを本書は教えてくれる。
 そんな本書。著者は、東京画廊代表取締役社長の山本豊津(1948-)である。
 東京画廊。
 私は行ったことはないが、本書によると「日本で最初の現代美術の画廊」とある。
 ちなみに著者は東京画廊の創業者・山本孝(1920-1988)の長男である。
 創業者・山本孝と東京画廊と聞いて、美術家・齋藤義重(1904-2001)の名前を思い浮かべる人は、現代美術に興味のある方だろう。本書にも、齋藤義重のエピソードが登場するので、ぜひ実際に読んで確認していただきたい。
 さて、通読して最も印象に残った箇所がある。それは「絵」と「美術」の違いについて書かれた箇所である。少し長いが引用する。
 「ちなみに画家が描いた美術としての絵画と、一般の人が描いた絵は違います。美術としての絵画は歴史的な流れの中でどのような位置にあるかで判断されます。たとえばどんなに印象派の絵が素晴らしく歴史的に意義があっても、今の時代にそのような絵を描いたとしても美術品としての価値はゼロです。(略)それに対して一般の人の絵というのは、もちろん自由に何を描いてもOKです。印象派のような絵が好きな人はそのように描いてみればいいし、(略)また抽象風の絵画やシュールレアリズムのような絵が描きたいなら、そのように描いてもいいのです。(改行)絵というものは誰でも描けるし、自由に描けるものです。それに対して美術というのは歴史を文化の蓄積の中で生まれてきた価値の体系で、その中で意味を持つものです。どちらがいいとか、どちらが価値があるというものではなく、別ものなのです。」
 (改行)以降の記述を読むだけでも、著者の考えは理解できるはず。これから「美術」の道を志す若い人たちは、ここで著者が言っていることを、肝に銘じたほうがいい。恐らく、ここまで言い切って言われてしまうと反発心を起こす方もおられるかもしれないが、私は、本書著者のこの記述を、重く受け止めながら読んだ。
 また、美術教育に関する記述もあり、これも深い(重い)。以下引用。
 「(略)私は芸術教育、美術教育にもっと力を入れてほしいと思います。ところが国はなかなかそれをしないでしょう。なぜなら権力や体制がもっとも恐れるのは、自由に『感じ』『考え』、そして『表現する』人間が増えることだからです。」
 …国は、ここまで考えた上で美術教育の時間数、または教諭数を減らしているのだろうか?という疑問は残るにしても。そうだとしたら、美術教育とは一体なんなのだろうか?
 本当に、本っ当に資本主義が終焉を迎える時が来るならば、その時に人々が再び立ち上がるために必要なのは、各々が「感じ」「考え」そして「表現する」ことではないのか?(そしてそれが真の一億総活躍社会ではないのですかと言いたくなってくる。)私はそんなことを考えながら読んだ。
 その他、著者の政治家秘書時代(!)のエピソードや、中国人アーティスト(例えば、シュービンという中国人アーティスト)についての解説なども面白い。現代美術に対して懐疑的に見ている人にも読んでいただきたい一冊だ。
 
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