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○2101『職業としての小説家』○

『職業としての小説家』
著者名:村上春樹 出版社:スイッチ・パブリッシング
文責:地歴公民 加藤真之

 「本の紹介」としてブログにアップするための原稿を書くにあたり、自分自身で決めたルールがいくつかあります。そのうちのひとつに「フィクション」として書かれた作品だけを扱おうという考えがありました。ブログという伝達方法を用いるにあたって、自分の生活の一部と物語世界とを関連づけて書くと面白いのではないかと思ったところから、このルールを設定することを思いついたのです。ところが、今日はどの本について書こうかなと本棚を見上げ、無意識のうちに手に取った伊藤整の『小説の方法』について書いてしまったことで、あっさりとこのルールを破ってしまいました。『小説の方法』は小説に関する研究書であり、特定の作品について語られた評論集でもあるのです。破ったのがあくまでも個人的なルールであることから、まあいいかと自分を甘やかすことにしました。そんな個人的な言い訳をしたうえで、今回は村上春樹の『職業としての小説家』について書きます。
 この本の帯には「自伝的エッセイ」とあります。帯は版を重ねる機会に変更される場合があるため、今後も必ずこの文言が使用されるとは限りませんが、私が読んだ限りにおいて、この本はやはり「自伝的エッセイ」と呼ぶにふさわしいものだと思いました。著者である村上春樹が日々の生活や作品について語っている文章の連続は、やはり「自伝的エッセイ」に他ならないのです。そして、この本に収められた一連の文章は、私にとってとても興味深いものでした。特に「なるほどなあ」と面白く読んだのが、「第三回 文学賞について」です。村上春樹は、過去に芥川賞の候補に挙げられたことが二回あります。どちらのときも受賞しませんでしたが、それとはまったく関係のない意味合いにおいて、文壇といわれる場所から比較的離れたところで仕事をしてきたといいます。芥川賞を受賞しなかったことと、文壇から離れたところで執筆活動を続けていたという二つのものごとの間には、本人の感覚としては特に因果関係がなかったといいます。しかし、評論家の中にはそうは見てくれない人たちがいたようです。「落ちて文壇から遠ざかる村上春樹さんのような作家がいるからますます(芥川賞の)権威のほどが示される」という文章が、某文芸誌の巻末コラムに掲載されたというのです。その結果、世の中には「そうか、村上春樹は芥川賞をとれなかったから、文壇から離れて生きてきたのか」と素直に思いこんでしまう人だっているかもしれないという心配が生まれてしまったのです。本人の意思とはまったくかけ離れていることが、まことしやかに語られるのは世の常かもしれません。しかし、それが活字となって衆目に晒されるとなると、余計な真実味が増してしまいます。「第三回 文学賞について」ではその不本意さが語られ、作家の苦労のほどを垣間見ることができます。
 今、私はこの文章を2015年12月30日に書いています。今日は特別進学コースの、3年生の冬期講習としては年内最終日ということになります。毎年、クリスマスイブかクリスマス、あるいは年内最後の講習日に、担当する3年生の授業で生徒全員が飲めるだけのコーヒーを淹れることにしています。もちろんコーヒーを飲みたいと思う生徒にだけ飲んでもらえればいいということにしています。決して無理強いするようなことはありません。もう十年以上前から欠かすことなく続けている恒例行事のようなものなのですが、今年は今日がその日でした。「年に一度くらいコーヒーを飲みながらリラックスして授業が受けられるような日があってもいいんじゃないかな」という軽い気持ちで続けていることです。仮に、世の中に「高等学校授業評論家会」のようなものが存在していると仮定します。その会によって、希望する生徒のためにコーヒーを淹れることにまったく異なる意味を付け加えられたとしたら、これは不愉快だろうなあなどと想像してしまいました。村上春樹が書く「第三回 文学賞について」の場合とはまったく次元の違う話ですが、要は推量によって本来自分が意図していなかったことをまことしやかに語られることの不愉快さを想像するために、今日の自分の行動の中で何か他人に批判あるいは批評させるようなことはなかったかなと思い出してみたのです。
 村上春樹に関しては、その作品全般にわたって数多くの評論が世に出ています。そのいくつかを私も読んでみました。「ふうん、なるほどな」と思う反面、「本当かなあ」「それはちょっと飛躍しすぎなんじゃないかな」と思うものもたくさんあります。いずれにしても、作家本人が健在で、「自分はこう考えている」と公言していることに関しては、そのまま真っ直ぐに作家本人の言葉を信じた方がいいんじゃないかなと思っています。世の中にどんなに優れた評論が登場したとしても、作品の中に盛り込まれた作家本人の意図を正確に推し量ることなど出来るものではありません。仮に「冬期講習中にコーヒーを飲ませるなんて、生徒を眠れないようにするための陰謀だ」と言う人がいたとしても、先に挙げた私なりの考え(それほど信念に満ちたものではありませんが)を信じてもらうより仕方がないのと同じことです。それにしても、「作家って大変なんだなあ」ということが分かりました。皆さんもぜひご一読下さい。
 
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