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東奥義塾高等学校 公式ブログ

○2220『朱の記憶 亀倉雄策伝』○

『朱の記憶 亀倉雄策伝』
著者名:馬場マコト 出版社:日経BP社 文責 美術 木村顕彦
 
 私の手許にある『高校美術3』(日本文教出版・高等学校美術Ⅲ116-日文・美Ⅲ-004)の教科書。
 そこには、見開き2ページにわたって、グラフィックデザイナー・亀倉雄策(1915-1997)のことが紹介されている。
 「19歳のときに、サン・テグジュペリの『夜間飛行』の装丁でデザイナーとして出発する。」(教科書記述より)
 19歳のデビュー。そこから、亡くなるまで、彼は日本におけるグラフィックデザインの第一人者であり続けた。
 本書は、その亀倉雄策の評伝である。当然、いま述べた『夜間飛行』装丁のエピソードも書かれているので、ぜひ読んでいただきたい。
 さて、グラフィックデザインであったり、企業のシンボルマークは、当たり前のように存在するので、改めて美しいとかと感じることが少ない。あまりにも洗練されすぎているだからか。それとも、自分が物心つく前からあるマークだからか。
 例えば、NTTのシンボルマーク。あの、くるりと回った曲線。あれが亀倉の代表作である。
 それ以外にもある。
 東京オリンピックのシンボルマークやポスターのデザイン。
 私が住む青森県で言えば、みちのく銀行のシンボルマークも亀倉によるデザインらしい。
 本書の紹介に戻る。
 本書では、戦中、戦後、高度経済成長期、バブル期それぞれの時代の中で亀倉がどんな仕事をしていたかが丁寧に綴られている。
 特に印象的だったのは、グラフィックデザインの歴史を語る上で欠かせない、日宣美展をめぐるエピソード。
 数々の優秀なデザイナーを輩出したその展覧会は、当時の学生から権威主義と誤解され、その勢いに呑まれて消滅していった。その流れについて書かれた箇所の中で、本書には次のような記述がある。
 「(略)グラフィック・デザイナーとはこんなに弱い存在だったのか。学生たちに存在の刃を突き刺されただけで、足もとから崩れ落ちてしまうとは。こんなことで日本のデザイン界は大丈夫か。しかし、それが『日宣美』の総意だという。(改行)ならば、彼らとは決別しよう。この二十年、日本のグラフィック・デザイン界の確立と発展に身命を賭してきたつもりの亀倉は、これからは一人で、この荒野を歩んでいこうと思う。」(本文より引用)
 この記述は、著者である馬場が、亀倉の気持ちになって書いたものであろう。
 そんな亀倉の気持ちに関する記述を読みながら、私は本書に登場するもう一ヶ所の記述を照らし合わせながら読んだ。
 それは、本書のラスト近くで登場する、ソール・スタインベルグ(1914-1999)に関する箇所だ。
 次に引用する言葉は、晩年の亀倉が編集をした雑誌『CREATION』の最終号誌上においてスタインベルグ特集をしようと思い、彼にその許可をとろうとしたときのものである。ちなみに、スタインベルグは「人嫌い、マスコミ嫌いで有名だった」という。
 「『CREATION』が優れた本だということはよくわかっている。しかし、過去のグラフィック・デザインはすべて捨てた。これが私の生き様だ。だから許してほしい」
 そんなスタインベルグの言葉のあとに、本書の記述は次のように続く。
 「それを聞いて亀倉は涙が止まらなかった。画家の道を選んだ以上、過去は捨てたというスタインベルグの生き様には共感する。それにしても悔しい。自分の信じるそれはそんなに簡単に捨てられるものなのか。悔しくて、悔しくて涙が止まらない。」
 悔しさの涙。本書にはそうある。
 だが、それだけだろうか?と私は思った。
 私には、かつて日宣美展の時に亀倉が感じた絶望感と、スタインベルグの言う「過去のグラフィック・デザインはすべて捨てた。これが私の生き様だ。」という言葉がシンクロしているように思えてならない。そしてそのシンクロを感じた時の、不思議な共感の涙なのではないか、と。
 デザインの世界の奥深さ、そして、亀倉雄策という巨人の存在を知るには最適の一冊だ。
学校所在地
036-8124               青森県弘前市石川長者森61-1  東奥義塾高等学校 TEL:0172-92-4111 FAX:0172-92-4116

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