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○0579『虞美人草』

『虞美人草』
著者名:夏目漱石 出版社:新潮文庫 文責 国語 坂本幸博

 私が初めてこの小説を知ったのは、高校時代の生物の授業である。当時、生物を担当していた教員が本を読みなさいという話の中で「自分が高校生の時に読んだ小説で、一番印象に残っているのが漱石の『虞美人草』である。登場人物の「糸子さん」が大好きだった」という旨の話をした。その話が印象に残り、私はその後すぐに書店で買い求めたのである。
 読んでみると、当時の私には非常に重苦しく感じられた。博士号を取得した主人公の小野が、放漫で虚栄心の強い藤尾と古風でおとなしい小夜子という女性の間で揺れ動く恋の話である。藤尾はどちらかというと小野自身の魅力よりも「博士号を取得した」という点に惹かれているというか「興味がある」ように感じられる。
 漱石は藤尾をそのように描いたうえで、個人的な手紙の中で「藤尾という女にそんな同情をもってはいけない。あれは嫌な女だ。(中略)あいつを仕舞に殺すのが一篇の主意である。うまく殺せなければ助けてやる。然し助かればいよいよ藤尾なるものは駄目な人間になる」と述べている。
 この小説を読んで、私がまず思い浮かべたのは、『こころ』である。これも恋愛によって、人が死んでしまう話として、『虞美人草』と共通する部分がある。私は、「Kの自殺」、「先生の自殺」とここでの「藤尾の死」には、漱石が描くべきだと思っていた何かが隠されていると感じるのである。
 一つの作品を本当に理解しようとしたら、その作品だけを読み込んでもだめであろう。同じ小説家の書いた他の作品を読むことで、さらに理解が深まったり、新たな視点を持つに至ることは少なくない。
 また、漱石には「学位をいただきたくないのであります」というあの文章がある。当時の文部省の勅令に定める学位令に基づいて授与された博士号を固辞したのである(同時に贈られた幸田露伴や森鴎外は受け入れている)。このことも考え合わせてみると、漱石が藤尾をあのように扱った理由が、また違って感じられるような気がする。本当に難しい小説であるが、ぜひ「考えながら」読んでほしい。
 ちなみに、糸子さんは、明るく家庭的な女性であり、私も登場人物の中で一番好意をもっている。当該図書に引き合わせてくれた当時の生物の教員に、本当に感謝したい。


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