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○0591『徒然草抜書』

『徒然草抜書』
著者名:小松英雄 出版社:講談社学術文庫 文責 国語 坂本幸博

 何度も紹介している筆者が、徒然草に関する問題点を抜粋し、それについて詳細な検討を加えた名著である。私が研究を志した1990年代後半には再版未定になっており、古書店では8倍から12倍程度の値段が付けられていた。そのため、ぜひ手に入れたいと思っていたが、金銭的に余裕のない当時、なかなか手を出すことができなかった。しかし、2000年の春、初めて訪れた関西学院大学の生協の書店において、新品の第6刷を見つけたのである。手に取る瞬間、手が震えたことを今でも鮮明に記憶している。もちろん、定価の800円で買えたのである。あまりに興奮し、そのまま指導教官のところに話しに行ったほどである。それを聞いた指導教官は、ただニコニコと笑ってくれたのであった。
 さて、すべての章段を紹介したいところではあるが、今回は「うしのつの文字」と「いみじき秀句」について「簡単に」ふれておくこととする。
 「うしのつの文字」とは、延政門院(後嵯峨院の皇女、悦子内親王)が幼いときに、院に参上する人に「ふたつもじ牛の角もじすぐなもじゆがみもじとぞ君はおぼゆる」という和歌を言伝に頼んだという内容である。この和歌の意味は「こいしくおもひまいらせ給ふ」であるとされている。「こ」は二筆で書かれるので「ふたつもじ」、「い」は牛の角を連想させる、「し」はまっすぐな文字、「く」はゆがんでいる文字であるということである。つまり「あなたのことを恋しく思っています」という伝言である(父親に向けられたものとされている)。徒然草の中ですでに謎解きはされていて、その謎解きそのものに問題はないのであるが、筆者はその解答を得るに至るまでの道筋を詳細に検討する試みをしている。他の文字の可能性は本当にないのか、「こいしく」は当時の仮名遣いであれば「こひしく」ではないのか、などなどである。
 注目したいのは、やはり検討における筆者の姿勢であろう。ありとあらゆる観点から、非常に詳細な検討を試みているのである。注釈書に書かれてあることを鵜呑みにせず、自身の頭でしっかり考えるという「思考の基本」が徹底されているのである。
 「いみじき秀句」では「法師」について検討が加えられている。中高生に「『徒然草』の作者はだれか」という質問をすると、ほとんどの生徒が「兼好法師」と答えることから分かるように、一般には吉田兼好のことを兼好「法師」と呼んでいるようである。しかし筆者は『徒然草』においての法師の扱いから、その呼び方はふさわしいものではないとしている。
 『徒然草』に登場する法師は、「石清水八幡宮を拝みにいったのに、麓の寺社だけを拝んで帰ってきた法師」、「余興に足鼎を被って踊り、抜けなくなって命を落としそうになり、やっと外した時には、鼻や耳がそげてしまった法師」「自分の飼い犬を「猫また」と勘違いして、必死になって逃げて賭けの商品ごと川に落ちた法師」のように、「のりの師」と呼ぶにふさわしくない法師たちが大勢登場する。ここに紹介した以外にも、『徒然草』には恥ずかしい行動をとって失敗する法師が、数多く登場する。
 つまり吉田兼好は当時の法師たちに批判的な目を向けていた可能性があるので、その兼好自身を「兼好法師」と呼んでしまうのはどうなのであろうか。なお、この考察は、この章段のほんの一部である。章段全体では他の事柄も含めて、非常に詳細な検討がなされている。
 当該図書のすばらしさは、このような程度の低い書評でお伝えできるものではない。皆さんは、ぜひ「自分の目で確かめて」、「自分の頭で考えて」、評価してほしい。なお、現在では再版されているので、書店で注文することができると思う。何回も版を重ねるに値する名著であるといえる。


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