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○0621『杜子春・南京の基督』

『杜子春・南京の基督』
著者名:芥川龍之介 出版社:角川文庫 文責 国語 坂本幸博

 日本を代表する小説家であり、短編を描かせれば右に出る者なしという芥川の短編集である。表題は『杜子春・南京の基督』となっているが、当然、他にも多くの短編が掲載されている。芥川のすごさは、日本や中国のいわゆる「古典」をアレンジし、元の物語の持つすばらしさを残しつつも、自身の「文学」を表現する点にあるといえる。
 「杜子春」は教科書に掲載されていることから、目にしたことのある人は多いと思う。杜子春という青年が、ある仙人のおかげで巨万の富を得るが、そのことで人間のいやな部分に気付いてしまう。そして、人間に嫌気がさした杜子春は仙人に弟子入りし、自身も仙人になるために、修行を重ねる。そして、最終試験である「無言の行」を迎えるのである。ありとあらゆる責め苦に耐えた杜子春であったが、ある光景を前につい「おっかさん」といってしまう。当然、試験は落第であり、仙人になれないのであるが、師匠の仙人はここで「もし声を出さなければ、私はお前を殺していただろう。」という旨のことばを発する。そして、それを聞いた杜子春は「これからは人間らしい生活をする」といって、にこやかに終わりを迎えるのである。
 「南京の基督」は貧しい家計を助けるために「私娼婦」として働く15歳の少女、宋金花の物語である。金花は「美しさは十人並みであったが、これほどの気だての優しい少女は二人といない」と形容されるほど心が優しい。嘘もいわなければ、わがままもいわず、お客のおいていく金額が少し多いときには、父のために酒を買っていくことだけが、唯一の楽しみだというのである。そんな金花の心の支えは亡くなった母親に教えられたキリスト教への信仰である。ところがその信仰のために金花に危機が生じる。梅毒に感染した金花は同輩たちの「客に移せば治る」ということばを信仰から受け入れることができない。このままでは父も自分も飢え死にをしてしまうのに、「人には移せない」という気持ちから、仕事をすることができなくなってしまったのである。
 そんな金花の前に、外国人の客が現れる。お互いことばは通じないのであるが、身振り手振りを交えつつコミュニケーションがはかられる。金花はその客の様子に親しみを感じつつも、仕事をしようとはしない。それを金額が少ないためと勘違いしたその客は、とうとう相場を遙かに超える金額を提示するのである。しかし、金花の気持ちは変わらない。そして、いらだった客が足踏みをすると壁に掛けてあった十字架が床に落ちる。それを拾った金花は、その客がキリストに生き写しであることに気付くのである。
 金花は客をキリストであると信じて体を許す。そして、次の日の朝、目を覚ました金花の隣にはだれもいないのである。もちろん、約束の金額もどこにもおかれていない。金花が昨夜の出来事を不思議に思っていると、自身の体に奇跡の起こっていることに気がつく。なんと梅毒が治っていたのである。
 その後、金花はキリストが自身の梅毒を治してくれたという話をある日本人にする。そして、その話をきいた日本人はあることを思い出す。金花がキリストと信じている男は、ジョージという名で、この日本人に「南京で私娼婦を買って、その女が寝ている間にそっと逃げてきた」という話をしていたのである。ジョージは梅毒が原因で発狂してしまう。そのことも知っていた日本人であったが、彼はそのことを金花に伝えるべきかどうか悩むという場面で物語は終わりを迎える。
 二つの物語を読んで感じることは「幸せとは何か」である。杜子春は人間のいやなところを知り、人間であることを捨てようとしたことにより、人間らしく生きていこうと決心する。金花は自身の病気をキリストが治してくれたと信じることで、幸せな日々を過ごしているのである。はたして「幸せ」とは何であろうか。この物語を読むことにより、そうしたことを考えるきっかけにしてほしい。


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